ガラパゴス化という、キャッチーな
似非理論が世に広まって、もう5年以上になります。
ガラケーという言葉も、すっかり日常語になってしまいました。

最近では、Galapagosizationで、Web辞書に載っていたり、
Galapagos Syndromeで、英語版のウィキペディアに載っていたり。

しかし。

そもそも、ガラパゴス化という言葉で言わんとするところは、

「井の中の蛙、大海を知らず」

という昔ながらの慣用句で、ほぼ表現できます。

「井」というのが、日本市場、
その中で威張っている「蛙」が日本企業ないし日本製品、
「大海」がグローバルマーケット。

2007年に、ガラパゴス諸島が危機遺産リスト入りした、
というニュースがあり、その原因が外来種だ、というあたりに
想を得たのかな、と推測します。

注1)ガラパゴスの危機遺産リスト入りは、90年代半ばから世界遺産
委員会で議論の対象となっていました。
注2)その後、2010年に危機遺産リストから除外されています。

で、当時、ガラパゴスはもうだめ、先がない、といった調子で
これでもか、と、過剰に煽る書籍やテレビ番組もありました。

なので、ガラパゴス化という言葉が
世間に受け入れられやすい環境でもあったでしょう。

しかし。

ガラパゴスは進化論のふるさとです。
世界の、ほかのどこにも似ていない、唯一無二の場所です。

そこに生存する生き物たちは、とてつもない試練を耐え抜いた、
きわめてサバイバビリティ(生存力)の高い種です。

想像してください。

あなたが、カメとかイグアナとか南米の
ジャングルに暮らす生き物だとします。

ある日、大嵐がやってきて、海に流されたとします。
寒流の冷たい水にさらされながら、幾日も。
そして命からがらたどり着いた陸地は、
見渡す限り溶岩と噴火口だけの火山島。

ちなみに、南米沿岸から赤道上を漂流すると、
ガラパゴスの次の陸地はインドネシアです。

ガラパゴスにたどり着けただけでも幸運です。

その先生き延びるのは、もっと困難です。

淡水を得るのは、どの島でも困難です。
赤道の強烈な太陽が照りつけます。
東側の島は侵食も進み、植生もある程度ありますが、
西側の島は溶岩平原です。

漂流した自分自身が生き延びるだけでは、
一代限りです。

自分と同じ時期・同じ場所に、
同じように漂流し生き延びている
異性がいなければ、
繁殖できません。

そんな僥倖のようなことが起きる確率は、
いったいどれだけでしょう。

注3)個体ではなくて、卵が漂着した可能性も
ありますが、それはそれで、ますます生存困難ですね。

2代目が生まれたとして、親と同じ、あるいは
親以上の困難が待ち受けています。

そうして何万年にもわたり代々の命をつないだ結果、
世界のどこにもいない姿・形・習性を
もった生き物(固有種)になったのです。

何億分の1、何兆分の1の確率ではないでしょうか。

これを、170年前にガラパゴスを訪れたダーウィンが観察し、
南米に生息している種と「似ているけれど、違う」
諸島の中でも、「島ごとに、似ているけれど、違う」
ことに着目し、やがて進化論が生まれたのです。

ですから、ガラパゴスをビジネスのたとえに使うなら、

  • どんな逆境にも耐え、生き延びる力
  • その生存力の源は環境への適応力
  • 他に追随も模倣も許さない突き抜けた独自性の獲得

といったところに着目するのが本筋です。

自らの意思で採った戦略で失敗した大企業のたとえとして
持ち出すのは、まったく筋違い。
(ガラパゴスの生き物たちに代わって、
名誉毀損で訴えたいくらいです)

そうではなくて、外部環境の影響をもろに受け易い
中小零細企業の生き残り策のヒントとして、活用したいですね。

また、ガラパゴスの生き物たちは、
厳しい自然選択をくぐり抜けてきましたが、
弱肉強食ではありません。

それぞれが独自のニッチを見つけて適応しながら
成立した生態系(エコシステム)です。

ひとり社長デパートの目指す姿も、これに近いものがあります。

というわけで、真の意味でのガラパゴス化こそ、
これからの日本の中小企業にとって必要ですし、
それをともに進める仲間づくりこそ、生きる道ではないでしょうか。

ちなみに、蛙(両生類)は、海水では生きられないので、
1,000kmの海を超えることはできませんでした。

井の中の蛙であるガラパゴス化論もまた、
大海では生き延びられない運命にあるでしょう。

ひとり社長の経営力アップ通信


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